不動産購入の際に、住宅ローンや投資用ローンを利用した場合は、毎月一定額を返済していかなければいけません。ローン返済が滞り、数ヶ月経過してもローンの返済を再開できる見込みがない場合は、金融機関が抵当権を行使することで、物件を手放さざるを得ない状況に陥ります。そういった状況下に置かれると、自分の所有する物件は、競売にかけられるか、もしくは任意売却で処分先を探すかの二択になるのが一般的です。
そこでここでは任意売却と競売の違いについてみていきましょう。
1.不動産の処分の方法には一般売却、任意売却、競売がある
不動産を売却処分する時には、一般売却・任意売却・競売の三つの手段がとられます。まずはそれぞれの違いを確認してみましょう。
1-1.一般売却とは
一般売却とは、不動産を所有している個人が不動産会社に売却を依頼し、売却活動を行うことを指します。不動産会社とは
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
の三つから一つを選び、契約を結んでいきます。
契約の内容に従い、不動産会社は売却活動を行います。契約は3ヶ月間の契約となり、3ヶ月ごとにどの契約形態で売却活動を行うのか、どの不動産会社に売却活動をしてもらうのかを選んでいきます。個人的な都合がない限り、いつまでに売らなければいけない、最低でも何円で売らなければいけないといった決まりはありません。
ただし売却したい物件が、ローンの返済中であり、物件を売却しても残債を完済できない場合は、金融機関は、一般売却を行うことを許可してくれないケースがほとんどです。
物件売却してローンを完済できる、もしくはローンの融資を受けておらず、抵当権が設定されてない物件であれば自宅や所有している不動産を一般売却できます。
1-2.競売とは
競売ローンを数ヶ月滞納した時に、債権者が抵当権を発動して債権の回収を行う手続きです。ローンの融資時には、購入した不動産を担保にしています。ローンの返済の見込みが立たなくなった時点で、債務者は抵当権を行使して、不動産担保の売却で債権の回収に努めます。債権者は不動産や債務者の財産を強制的に差し押さえることができますし、また裁判所の権限で強制的な売却が可能です。競売で売却した代金は債権者に引き渡されます。
1-3.任意売却とは
任意売却も、住宅ローンなどのローン返済が停滞した時に行われる手続きです。競売と大きく違うのは、不動産の売却において裁判所が介入しない点です。裁判所が権限を行使し、強制的に不動産の売却が行われるわけではありません。
債権者である金融機関と債務者が相談のうえ、不動産を売却しても残債を処理できない場合に、その残債をどのように返済していくかを相談しながら、売却活動を続けていきます。
2.競売と任意売却の違い
では競売と任意売却は、一般的にどのような点が違うのかを詳しく見ていきましょう。
2-1.任意売却は一般売却と自由度が変わらない
任意売却は、基本的には一般売却と同じです。不動産会社と相談しながら各種の契約を結び、不動産会社に売却活動に入ってもらいます。競売のように厳密な期限が設定されるわけではないので、じっくり売却活動を行い、高い値段での売却を目指すことができるのです。
また競売手続きに入ると、裁判所の人間が立ち入り、写真撮影や物件の状態の調査などを行います。周辺の住人に「あの家は多くの人が出入りしている」「自宅を売却せざるを得ない状況に追い込まれているのではないか」と察知されてしまいます。
しかし任意売却であれば、裁判所が立ち入りなどを行うことがありません。精神的な負担を感じることもなく、周囲に売却活動を行っていることを察知されにくいです。通常の生活を送りながら、売却活動を行うことができるのです。
期限はいつまでにするのか、売却金額はどの程度を最低額確保するのかは、金融機関との相談で決めていきます。金融機関も柔軟な交渉に応じてくれるケースが多いです。
2-2.競売は強制的に退去させられるので、自由度が低い
競売は、債務者の自由度が大変狭くなってしまいます。裁判所は強制執行の権限を持っており、書面作成のため競売にかけられる不動産には、自由に出入りする権利を持ちます。たとえ鍵をかけていたとしても、その鍵を裁判所の権限で解除して立ち入り、調査や撮影を行ってきます。そのため家族にかける精神的負担も非常に大きいです。
また競売は基本的に何月何日に競売の入札を行い、引き渡しをいつまでに行うという、スケジュールが最初に決められています。入札や落札手続きもそれに沿って行われ、引き渡しの期限を過ぎてしまうと入居者は退去せざるを得ません。引き渡し期限内に新しい家を見つけ、生活の立て直しを払わなければいけないのです。
収入がない人、子供の学校の都合であまり遠くに引っ越したくないという人でも、確実に自宅を失う事態に追い込まれるので、生活を維持のための取り組みをしながら対策を立てる時間が取れないのです。そのため一度家を競売にかけられてしまうと、大きく生活リズムが狂ってしまい、最悪の場合一家離散に繋がるケースすらあるのです。
自宅を売却しなければいけないという点は競売も任意売却も同じですが、債務者の自由度の高さ、強制執行がない点で、大きく債務者の負担が違ってきます。
2-3.売却価格にも差が出やすい
また競売と任意売却では、物件の売却価格にも差が出やすいです。競売は不動産鑑定士が物件の調査を行い、最低落札価格を設定します。その最低落札価格は一般的な不動産相場の5割前後に設定され、落札の結果も、よほど立地が良くない限りは一般的な相場の7割から8割程度になることが多いです。自宅を競売で失っても、残債の返済義務は残るので、その後の返済負担は大きいままです。
家を失った後、新居の家賃を支払いながら残債を分割して返済しなければいけないので、生活を立て直しも困難です。
しかし、任意売却の場合は一般的な売却活動を行うことができるので、最低落札価格を設定する必要がありません。一般的な不動産相場に近い価格帯で、売却できるケースが多いです。
そのため、債権者である金融機関自身も、競売よりも任意売却での解決を望む方が多いのです。金融機関にとっても任意売却出た各物件が売れれば、融資した資金の大半を回収できます。また引任意売却であれば、金融機関と相談の上引っ越し代や生活の立て直しに必要な資金も、売却代金から捻出できることがあるのです。
精神的な負担だけではなく、経済的な面でも任意売却の方が競売よりもメリットが大きいです。
2-4.任意売却であればリースバック契約を結んで住み続けることもできる
また任意売却のもう一つのメリットに、物件の購入者とリースバック契約が結べるという点があります。
リースバック契約では、購入者・買主から売却代金を受け取ることができます。そして家から退去するのではなく、家賃を支払って毎月住み続ける賃貸契約を結ぶことを指します。
自宅は失いますが、売却代金をもらうことができるので、毎月の家賃を確保できます。そして2年間、5年間など一定期間の賃貸契約を結び、その期間内に生活を立て直すことを目指します。
生活を立て直すことができれば、賃貸契約期間が終了した後に、家を買い戻すこともできるのです。引っ越すこともなく、生活基盤が維持できるので生活の建て直しをしやすいのがリースバック契約のメリットです。
また購入側からしても、退去の可能性が非常に賃貸物件を手に入れられるメリットがあります。物件を買い戻しもしてもらえれば、賃貸物件運営上のリスクが少ないです。
リースバック契約は借主にも貸主にもメリットがある、まさにwin-winな関係を築ける契約なので。
まとめ
自宅をどうしても手放さざるを得ない時には、競売にかけられる前にまずは任意売却を相談するのがおすすめです。任意売却の仲介を行っている業者もいますし、税理士や金融機関に直接仲裁を持ちかけても良いでしょう。経済的な負担を減らし、家族の生活を守っていくことができます。