「不動産の相続税はどれくらい?」「注意することはある?」
など、不動産相続の税金について、疑問を持っている方は多いです。
ここでは、不動産相続に関する税金の注意点や知っておきたい基礎知識について、紹介しています。
1.税制改正により難しくなった節税対策
税制が改正されたことで、これまでは効果的だった、いくつかの節税対策が難しくなっています。
ここでは、ハードルが高くなった、海外不動産やタワーマンションの節税対策について、見ていきましょう。
1-1.海外不動産相続の節税はハードルが高くなった
「海外の不動産を所有すれば節税になる」と、これまで考えられていましたが、税制改正により、節税のハードルは高くなりました。
なぜなら、
・税制改正前:被相続人が海外で5年以上生活していれば、日本の相続税対象外
・税制改正後:被相続人が海外で10年以上生活していれば、日本の相続税対象外
日本の相続税が対象外になるには、被相続人が10年以上海外で生活していなくてはなりません。
これまでの倍の期間が必要となるため、容易ではありません。
1-2.高層階のタワーマンションは固定資産税が高くなる
税制改正前までは、タワーマンションの低層階と高層階は、販売価格は変わっても固定資産税評価額が同じだったため、節税が可能でした。
現金よりもマンションの方が評価額は低いため、相続直前に高層階を購入し、相続後に売却をすれば、多くのお金を手元に残すことができたのです
しかし、税制改正により、同じ節税対策を行うと租税回避行為とみなされてしまい、追徴課税される恐れがあります。
タワーマンションの固定資産税は、1階高くなるごとに約0.25%増えていくようになります。
つまり、高層階ほど固定資産税は高くなるのです。
このような理由から、節税対策としてタワーマンションを買う意味は薄れているのが現状です。
2.不動産相続時の注意点
不動産相続が原因で揉め事やトラブルに発展することは多いです。
相続時の注意点を知っていれば、揉め事やトラブルを回避しやすくなります。
ここでは、主な3つの注意点を紹介していますので、一つひとつ確かめていきましょう。
2-1.注意点 持分で分けるのは難しい
不動産相続時に共有持分にすると、あとで揉める可能性があるため注意しましょう。
持分の比率で揉めたり、売却しようにも全員の合意が必要になるためです。
たとえば、長男、長女、次男、次女の4人で共有持分にしたとします。
持分比率が、長女と長女が多ければ、次男と次女の不満につながるでしょう。
もし、それぞれの持分比率が同じであれば、長女と長女から不満が出るかもしれません。
また、いずれは兄妹の子どもたちの共有持分にもなるため、管理がとても難しくなります。
誰かが売却を提案しても、全員の合意がなければ売却することはできません。
共有持分だと、意見が食い違い、トラブルに発展する可能性があることを理解しておきましょう。
2-2.注意点 土地の分筆が難しい場合
土地の分筆が難しいこともあるでしょう。
分筆が難しい場合は、売却をして相続することも検討してください。
分筆にはさまざまなルールがあり、分筆をすることで土地の価値が大きく下落することもあります。
価値が下落する分筆よりも、売却して財産を分けた方が良い場合もあります。
両方を比較して、より価値が高い方法で相続するようにしましょう。
2-3.注意点 相続法改正により遺留分の取り扱いが変更
2018年に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立したことで、相続法が改正され、遺留分の取り扱いが変更されました。(2019年7月から適用)
遺留分の取り扱いがどのように変更したのか知っていないと、相続で損をしたり、トラブルになる可能性があります。
そもそも遺留分とは、法定相続人の直系尊属(配偶者や子どもなど)が認められる相続分の最低保証枠のことです。
被相続人が残した遺言書に、「長男のみにすべての財産を相続する」と記されていたとしても、他の兄妹は法律で定められた割合分の財産を取得できる権利があります。
法改正によって変わった主な内容は、以下4点です。
- 生前贈与の特別受益の対象は10年以内
- 相続債務の弁済で控除
- 金銭債権扱い
- 不相当対価の有償行為減殺で償還不要
遺留分の取り扱いが変わったことを把握しておきましょう。
3.相続に関する基本知識
「どんな財産が相続対象になるのか」「相続税率はどれくらいなのか」など、相続に関する基本知識は押さえておく必要があります。
基本的な知識を知らないと、適切な相続シミュレーションもできません。
ここでは、相続に関する基本知識について、見ていきましょう。
3-1.相続税は対象になる財産・対象にならない財産がある
すべての財産が相続税の対象になるわけではありません。
相続税の対象になる主な財産には、次のものがあります。
- 預貯金
- 不動産
- 貸付金
- 有価証券
- 貴金属
- 著作権
一方、以下の財産は、相続税の対象にはなりません。
- 弔慰金
- 花輪代
- 墓地、墓石
- 仏壇、仏具
- 神棚
- 寄附した財産
事前に、所有財産が相続税の対象かそうでないか確認しておきましょう。
ただし、生命保険金は注意が必要です。基本的には遺産分割協議の対象にはなりません。
しかし、被相続人が負担した分は、みなし相続財産になるため相続税の対象になります。
3-2.累進課税なので取得金額に応じて税率は高くなる
相続税は所得税同様、累進課税です。
取得金額が増えるほど、税率も高くなります。
最も低い税率は10%ですが、最も高い税率は55%と、大きな差があります。
ただし、相続税には基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」があります。
そのため、相続財産が3,600万円以下の場合は、相続税はかかりません。
以下は、取得金額と税率、控除額です。
・1,000万円以下 税率:10% 控除額:0円
・1,000万円超3,000万円以下 税率:15% 控除額:50万円
・3,000万円超5,000万円以下 税率:20% 控除額:200万円
・5,000万円超1億円以下 税率:30% 控除額:700万円
・1億円超2億円以下 税率:40% 控除額:1,700万円
・2億円超3億円以下 税率:45% 控除額:2,700万円
・3億円超6億円以下 税率:50% 控除額:4,200万円
・6億円超 税率:55% 控除額:7,200万円
4.賃貸不動産は相続税の節税になる
相続する不動産が、アパートなどの賃貸住宅の場合、相続税の節税になります。
賃貸住宅は、居住用住宅に比べて評価額が低いためです。
土地の場合、評価額は居住用住宅が時価の7割〜8割ですが、賃貸住宅は時価の6割〜7割になります。
建物の場合、居住用住宅は時価の5割〜6割ですが、賃貸住宅は時価の3割〜4割です。
このように、賃貸住宅の方が、評価額が1割〜3割程度も低くなります。
よく「賃貸住宅にすれば節税できる」と言われるのは、このような理由からです。
4-1.土地・建物の評価額
不動産は、土地か建物によって、評価額の基準となるものが異なります。
市街地の土地は「路線価」、市街地以外の土地は「倍率」、建物は「固定資産税評価額」です。
路線価とは、毎年7月に公示される道路に価格を付けたものです。
倍率は、山林など路線価が付かない土地を評価するものになり、固定資産税評価額に各地の倍率を掛けます。
固定資産税評価額は、土地が時価の7割〜8割、建物が建築費の5割〜8割程度です。
土地や建物によって、評価額が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
不動産は、現金よりも節税効果は期待できますが、相続の際に揉める恐れがあります。
また、税制改正によって、海外不動産やタワーマンションによる節税が難しくなっています。
不動産投資をするのであれば、流動性が高く税金が安い、ワンルームマンションへの投資が有効です。
これから不動産投資を考えている方は、ぜひここで紹介した内容を参考にしてください。