不動産物件を購入する時は、その道に達した熟練者であるほど、物件の実地調査を念入りに行うものです。
チェックするポイントは物件の規模により異なりますが、チェックポイントが多ければ多いほど問題点を見抜き、リスク対策を講じることができます。
しかし、最初から50も100も問題点をチェックするのは、なかなか難しいものです。
そこで、まずは基礎知識として最低限プロが見るポイントをご紹介します。
1.建物そのものの状態
まず、絶対に見ておきたいポイントの1つが、建物そのものの状態です。
建物そのものは後々修繕工事で補修できます。しかし、躯体に関わる工事は費用が多額なものになってしまいます。
そのため、問題のある物件を購入してしまうと、後々莫大な出費が発生しかねません。
しっかりと見ておくべきポイントとは、果たしてどういった所なのでしょうか。
1-1.壁のクラックなど構造に関するポイント
壁のクラックとは、ひび割れのことです。ひび割れがないかどうか、きちんと見ておきましょう。
日本は地震大国です。特に21世紀に入ってから震度7を超える大地震が数回発生しています。それだけに建物の耐震性は多くの人が重視するポイントです。
たとえ賃貸物件であったとしても、耐震性が低い建物に住みたい人はいないでしょう。
また、地震保険は満額が保証されるものではありません。わかりやすいリスク対策として、ひび割れが起きているような物件は避けた方が無難です。
そして、同時に外壁の状態も見ておきたいものです。外壁塗装は足場を組むためにかなりの費用が発生してしまいます。
外壁は美観にも影響します。外壁が汚れている物件に住みたい人は、そうそういないでしょう。
1度外壁を触ってみましょう。粉を吹いているような状態だと、塗膜がかなり薄くなっています。
キャッシュフローに余裕がない限り、すぐに大規模な修繕が発生しそうな物件を購入しない方が良いでしょう。
1-2.鉄さびなど美観、耐久性に関するポイント
アパートの場合、外にむき出しの鉄階段などを設置しているケースが大半です。鉄階段に錆(さび)が発生していないか、塗装の必要の有無をきちんとチェックしておきましょう。
まず、錆の発生は、耐久性が大幅に低下していることを意味します。
住人が階段を上っている時に階段が崩れて怪我した場合、大家の責任問題に発展します。
しかも、錆だらけの外観は見た目に良い印象を与えません。特に美観にこだわる人は、錆だらけの階段を見た時点で「この部屋には住みたくないな」と思ってしまうでしょう。
鉄錆は、耐久性と美観の両方に影響するマイナスポイントです。
また、古い建物の場合、配管が鉄パイプということがあります。
金属製のパイプは水質に悪影響を及ぼします。
やはり、錆は美観を損なわせます。
金属製のパイプを扱っている物件は買わない方が良いかもしれません。
1-3.傾きがなく、水平になっているか
建物の傾きも耐震性や堅牢性を見る上では非常に重要なポイントです。
傾いている建物は入居者の平衡感覚を狂わせ、健康面に悪い影響が出ます。
地震などの影響で沈下が発生し、誰が見ても明らかに傾いている物件は、絶対に購入してはいけません。
部屋の中で水平器などを使用して、建物の傾きの有無を確認しましょう。
2.周辺の環境
次にチェックするべきは周辺の環境です。お金をかければ建物の外観や構造、内装などは変更することが可能です。
しかし、周辺の環境は自分の努力次第ではどうにもできません。
不動産は立地が命と言われるのも、周辺環境の問題は自力で解決できないからです。
2-1.電線はどのように引かれているのか
意外と気づかないポイントとしてチェックしたいのが、電線がどのように建物に引かれているかです。これには2つの理由があります。
1つは停電の起こりにくさ、もう1つは電力会社から設置費がもらえるかどうかです。
電柱が近くにあって電線が短ければ、断線しにくくなって停電が発生しなくなります。
断線が発生すると、当然ながら停電になってしまいます。
停電のリスクが少ない電柱から家までの距離が短い建物を選ぶようにしましょう。
他にも、場合によっては敷地内に電柱が設置されていることもあります。
実を言えば、電柱の設置には決まりごとがあります。電力会社は土地の持ち主(地主)に一定の費用を支払った上で場所を借り、電柱を設置しているのです。
そのため、電柱が土地内に設置された物件は、わずかですが設置費が毎年入る可能性があります。意外にもまとまった副収入になるのでチェックしておきましょう。
2-2.第一印象がどんなものか
漠然としたポイントですが、物件の第一印象もチェックするべきです。
若者や女性の場合、やはり、綺麗な建物に住みたいと思う人は多いでしょう。
第一印象でおしゃれな雰囲気、清潔そうな雰囲気、安全そうな雰囲気を与える物件は、やはり人気があります。
また、建物だけではなく道路から建物に入るまでの通路、周辺の施設が与える影響も重要です。
例えば、物件の周辺の墓地などは、大いにマイナスです。
それだけで敬遠する人もいるくらいです。
2-3.駐車・駐輪スペースはあるか
駐車場や駐輪スペースの有無もチェックするべきポイントです。
特に、地方のファミリー向け物件では、駐車スペースがなければ話になりません。車で移動する人が多いので、駐車スペースが世帯数だけ用意されている物件を選びましょう。
逆に、都心の単身者向け物件の場合、車を必要とする人はほとんどいないので、あまり気にする必要はありません。
都会でも自転車やバイクは人気があるので、駐輪スペースがあると便利です。
3.内装部分
内装部分もよく見るべきポイントです。内装部分の工事費用はそれほどかからないのですが、それでも確認しておくに越したことはありません。
3-1.室内洗濯機置場はあるか
今や必須と言えるのが、室内洗濯機置場です。寒い日に外に出て洗濯したい人はあまりいませんし、洗濯しているところを他人に見られたくない人もいるでしょう。
部屋の中に洗濯機置場を設置する場合は配管工事が必要ですが、部屋の一部が洗濯機の分だけ取られてしまいます。
それでも、室内洗濯機置場を予め設置した物件を選んだ方が、居住面で大きなメリットがあります。
3-2.ユニットバスをバス・トイレ別にするだけのスペースが有るか
今人気の設備と言えば、バスとトイレが別になっているものです。ユニットバスの物件は避けられる傾向にあります。
ユニットバスから風呂を分離する工事、または、トイレ・洗面台・風呂に3分割する工事の費用は、100万円以上かかってしまうこともあります。しかも、風呂を別にした場合、部屋の居住部分のスペースが狭くなってしまいます。
ユニットバスからバス・トイレ別にする際に室内スペースを確保できるか、そして、比較的工事がしやすい造りかどうかを確認しておきましょう。
3-3.防水はどうなっているのか
天井に登って防水がどうなっているかも見ておきたいものです。やはり、防水工事も多額の費用が発生しますし、防水が不十分な物件は建物の腐食を招き、大規模な修繕工事が必要になってしまいます。
できれば防水工事を済ませたばかりの物件を選びましょう。
ここに挙げた項目は、基本的なチェック項目ばかりです。
物件のチェックを入念に行い、他にもどんな場所をチェックするべきなのか、不動産会社や大家仲間に聞くなどして勉強を怠らないようにしましょう。