住宅ローンや投資用ローンの融資を受けるとき、金利の返済については二つの方式のどちらかを選ぶことになります。その二つとは、元本均等方式と元利均等方式です。
二つの方式にはそれぞれメリットがありますが、よく考えて選ばなければ、返済の負担がより重くなってしまうことがあります。そこでそれぞれの金利方式の特徴をよく知って、どちらが自分に向いているのか、確認していきましょう。
1.ローンの返済には2種類の方法がある
まず元本均等方式と元利均等方式、それぞれの特徴を見ていきます。
1-1.元利均等による返済方式とは
元利均等による返済では、ローンの融資を受けたとき、毎回の返済額が常に一定額に抑えられます。例えば35年返済、金利1.5%の条件で3,000万円の住宅ローンを受けたとします。その場合、毎月の返済額は91,885円になります。35年間、つまり、420回の返済のうち、419回までは毎回91,885円の返済を続けていくことになります。420回目の返済のみ、残金を返済することになるため、91,885円よりもやや少ない金額になります。
1-2.元利均等による返済方式では、返済額が一定になっている
元利均等による返済方式では、ローンの返済を始めてから終わるまで、常に一定の金額の支払いになります。そのため、返済プランが立てやすく、自分たちの収入から毎月どれぐらいの額の出費があるかを計算に入れながら、家計を考えていくことが可能です。例えば今は夫が一人で働いているが、将来的に子育てが一段落して妻も働きに出ることになった場合の総収入の見通しに加えて、その中から住宅ローンなどの費用に充てられる額などの目算が立つようになり、将来の青写真が描けるなどのメリットがあります。そのため、固定金利で借りるローンと非常に相性が良く、自分たちの人生プランの計算が可能です。
1-3.元利均等方式では、借入金の残高が減りにくい
いっぽうで、元利均等による返済方式のデメリットと言うと、借入金の残高がなかなか減らないことです。例えば先に挙げた3,000万円を返済期間35年、金利1.5%で返済する場合、初年度の返済の内訳を見ると、毎月の91,885円の返済のうち、約37,000円が金利です。そのため、約55,000円ずつしか元本が減っていきません。元本が減る早さは元金均等による返済方式よりも、どうしても遅くなってしまいます。その結果、最終的に支払う金利の総額が大きくなる傾向があります。可能であれば定期的に繰り上げ返済を行い、支払う金利の額を少なくしていきたいところです。
2.元金均等返済方式とは
それでは元利均等による返済方式に対し、元金均等による返済方式の特徴とはどのようなものが挙げられるでしょうか。
2-1.返済額の内、元金の金額が一定
元金均等による返済方式は、毎月の返済金額のうち、元金の金額が一定になっています。先に挙げたように返済期間35年、金利1.5%の条件で、3,000万円のローンを元金均等による返済方式で具体的な返済額を確認してみます。
シミュレーションの結果、毎月の返済金額は108,928円、元金返済分は71,428円、支払金利は37,500円となりました。
これだけを見ると、毎月の返済金額が多く、支払金利は元利均等による返済方式と変わらないため、返済負担が大きくなってしまうと思われるかもしれません。
しかし、11年目の返済金額の内訳をみると、以下のようになっています。
- 返済金額:98,213円
- 元金返済分:71,428円
- 支払金利:26,785円
このように毎月の返済額は1万円ほど減っています。ただし、それでも、元利均等による返済方式に比べ、毎月の負担が大きいと感じるかもしれません。
それでは30年目の返済額を見てみましょう。
- 返済金額:76,874円
- 元金返済分:71,428円
- 支払金利:5,446円
このように毎月の返済金額が77,000円弱まで減っています。30年目ともなると六十歳を過ぎて定年退職、もしくは、再雇用になっている人も多いでしょう。返済に十分な収入が得られる期間にローンの返済負担を毎月減らすことができるため、最初の負担の大きさに比べて徐々に楽になります。これは元金均等による返済方式のメリットだと言えます。
3.元利均等方式と元金均等方式、どのようなときに使うべきか
これまでの例に挙げたように35年間、金利1.5%で3,000万円を借りた場合、それぞれの方式での返済総額は、以下のように変わってきます。
- 元金均等方式 37,893,605円
- 元利均等方式 38,579,007円
元利均等方式に比べて元金均等方式のほうが68万円ほど、総額が少なくなります。ただし、25年目ぐらいまでは毎月の返済金額が多いため、収入が少ないうちは返済負担が大きく、ローン返済のリスクに繋がってしまうこともあるのです。
また、上記の例では金利を1.5%として計算しましたが、仮に金利が2.5%の場合、元金均等方式と元利均等方式の差はさらに大きくなります。
- 元金均等方式 43,156,147円
- 元利均等方式 45,044,199円
このように元金均等方式の支払総額は200万円近くも少なくなるのです。金利が高いときに融資を受けた場合、元金均等方式のほうが元金を早めに返せるため、最終的な支払総額はかなり減ってしまうのです。
ただし、昨今の状況では、住宅ローンはかなりの低金利で融資を受けることが可能です。35年間が固定金利のフラット35でも、1%台前半の金利で融資を受けることができますし、最初の5年間を0.5%前後の変動金利で融資を受けることも可能になっています。金利が下がれば下がるほど元利均等方式は毎月の返済に余裕が出るため、若い人にとって返済しやすい方法だと言えます。
元金均等方式による融資に向いた人とは、最初にある程度の収入を得ている人、毎月の返済負担が多少重くても、生活する上で特に支障をきたさない人だと言えるでしょう。また、金利の上昇時には、元金均等による返済方式で融資を受けたほうが負担は軽くなりますので、この点はメリットです。
いっぽうで、元利均等による返済方式の場合は、毎月のローンの返済を一定額に抑えることができます。収入がそれほど多くない人にとって、こちらの方法であれば返済できなくなる可能性は低いと言えます。
まずは元利均等方式でしばらくの間は返済を続け、貯金ができたら一定のタイミングで繰り上げ返済に切り替えていく。この方法が住宅ローンの返済リスクを最大限に減らすことになるでしょう。
いっぽうで、投資用ローンの融資を受けるときは、住宅ローンとはまた事情が違ってきます。返済期間を長期に渡る35年に設定することは難しいですし、金利も住宅ローンのように1%台で融資を受けることは非常に難しいです。2%台でもかなり条件が良いほうで、3%から4%台の金利も当たり前です。こういった場合、ある程度の自己資金を持っていることが前提ですが、元金均等による返済方式にして支払金利を少なくしたほうが良いのかもしれません。
ただし、不動産投資においては、キャッシュフローを確保しておくことも重要です。元金均等による返済方式で、キャッシュフローを削ってまで無理に返済を続けていては、どうしても返済上のリスクが上がってしまいます。
投資において期限の利益の喪失を起こさないようにするためには、基本的には毎月の返済負担をできる限り減らすのが鉄則だと言えます。
また、住宅ローンの返済リスクを可能な限りなくしていくには、元利均等による返済方式を利用するのが良いでしょう。実際の住宅ローンの融資では、元利均等による返済方式を選択する人が大半を占めています。