不動産を使った投資手法の中でも、有名なものには不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITがあります。
どちらも不動産を通じて安定した利益を獲得できる方法として、最近では人気があります。
ただし、それぞれには利益が出る仕組みが異なるなど、独自の特徴があります。また、投資である以上、当然ながら損失が発生するリスクも存在します。
そこで、それぞれの投資手法の特徴を知り、どちらがより自分に合っているのか、また、どちらの方が安全に投資できるのか、選ぶことが重要です。
ここでは、不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITを比較し、それぞれのメリットをお伝えします。
1.不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITそれぞれの特徴
まず、不動産投資型クラウドファンディングとJ-REIT、それぞれの特徴を知っておきましょう。
特徴を知っておくことで、どのようなリスクが発生するのか、見当がつきやすくなります。
1-1不動産投資型クラウドファンディングの特徴
不動産投資型クラウドファンディングとは、不動産特定共同事業法に則って運用される投資です。
まず、不動産会社がインターネット上で不特定多数の人間から資金を集めます。
資金を集めた後に匿名契約が締結され、投資家は収益を受け取る権利を獲得します。
不動産会社は、投資家から集めた資金をもとに不動産を購入し、賃貸物件として運用したり、リフォームを行ったりして資産価値を高めます。
不動産を運用して得られた利益、もしくは、売却して得られた利益が投資家に分配されるのです。
大半の不動産投資型クラウドファンディングサイトでは、1万円や2万円などの少額からの投資が可能です。
不動産投資を始めるだけの資金がない人でも、自分の収入に見合った範囲で不動産投資を行うことができます。
また、登記の手間や税金も発生しないので、手軽さも魅力です。
1-2.J-REITの特徴
J-REITは、複数の不動産運営を証券化したものです。不動産投資信託とも呼ばれます。
証券化されたJ-REITは、証券市場に上場して売買されます。
J-REITを購入した人間は、不動産の運用益を定期的に受け取ることができます。
また、証券市場では相場が上下するため、相場の変動次第では売買益を得ることも可能になります。
J-REITの市場規模は5兆円とも言われており、その規模は非常に大きなものがあります。
2.それぞれの投資手法のメリットとリスク
不動産投資型クラウドファンディングとJ-REITは、不動産の運用益を投資家に対して配当する点において大きな違いはありません。
しかし、運用スキームに関わる法律が異なりますし、メリットやリスクもそれぞれ違います。
そこで、それぞれの投資手法のメリットとリスクをお伝えします。
2-1.不動産投資型クラウドファンディングのメリットとリスク
不動産投資型クラウドファンディングの大きなメリットは、定期的に利回りを得ることができること、そして、損失が発生する可能性が低いことです。
不動産投資型クラウドファンディングの利回りは、現在運営されている会社のサービスを見ると、4%から6%程度です。また、地方の空き家物件の再生ファンドなどを見ると、8%から10%程度のかなり高めの利回りの案件があります。
投資信託と比べて平均的な利回りは高めですので、収益性を求める投資家にとって選択肢に加えるべき投資商品の1つになりつつあります。
また、不動産投資型クラウドファンディングは、優先劣後出資というシステムを導入しています。
そのため、投資家の損失が発生しにくいのです。
優先劣後とは、例えば、1億円の物件を購入する時に7,000万円を投資家から先に集めます。そして、残りの3,000万円を不動産会社が出資します。
仮に、1億円で購入した不動産を売却して9,000万円位にしかならなくても、最初に損失を被るのは劣後出資を行った不動産会社です。1000万円分、つまり、割合にして不動産が実質的に10%値下がりしたからといって、投資家には損失が発生しません。
不動産売却時の価値の減少に伴う価格リスクは不動産会社が負うので、投資家が負うリスクはかなり限定されたものになります。
リスクとしては、不動産が思うように運営できないこと、また、狙った価格で売却できないことです。
地方の空き家物件などを購入したものの買い手がつかず、運用も売却もできない状況に置かれかねません。
たとえ損失の一部を不動産会社が負うとしても、物件が売れなければ投資家に損失が発生する可能性は十分に考えられます。
2-2.J-REITのメリットとリスク
J-REITのメリットは、こちらも配当金です。
J-REITでは、一定のタイミングで配当金を受け取ることができます。さらには、証券市場に上場しているので、価格の変動によって売買益を得られる可能性があることです。
J-REITも不動産物件を運営し、得られた運用益を投資家に対して分配します。メリットとして、証券の運営側が利益の90%を分配することで非課税になることが挙げられます。
利回りとしては2~4%程度です。不動産投資型クラウドファンディングと比べればやや低いです。
ただし、不動産投資型クラウドファンディングよりもJ-REIT の方が歴史は長く、市場も安定していると言えます。
運営会社も大規模な会社が多いため、中小の不動産会社が運営することが多い不動産クラウドファンディングと比べ、会社の倒産リスクは低いです。
そして、証券市場では価格が値上がりすることがあるため、状況によっては配当益よりもさらに大きな売買益を得ることができます。
一方、為替相場の変動は、当然ながらリスクにもなり得ます。
リーマンショック時のJ-REITの平均価格は、直前の最高値から5割以上も下落しました。
もちろん、所有期間中は配当を受け取ることができますが、価格が大幅に下がってしまうとなかなか手放すことができません。その結果、塩漬けになってしまうことがあるのです。
不動産クラウドファンディングに比べてハイリスク・ハイリターンであるのがJ-REITだと言えるでしょう。
3.どちらの投資手法が向いているのか
さて、不動産投資型クラウドファンディングに向いている人、J-REITに向いている人は、どういった人なのでしょうか。
3-1.安定を求める人は不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングは、価格の下落リスクを不動産会社が負担してくれるので、基本的にはリスクが低いです。
地方の空き家物件などのボラティリティの高い物件に投資しなければ、利益が出る確率はかなり高いと言えます。
安定だけを求めるのであれば、不動産投資型クラウドファンディングを選びましょう。
3-2.安定の上に値上がりを期待したければJ-REIT
J-REITも配当金が定期的に配当されるので、利益を出すだけであればそれほど難しいものではありません。また、現在の不動産市場は全体的に値上がり傾向にあり、J-REITの平均価格はリーマンショック前の水準を上回っています。
配当金を受け取るだけに満足せずに、さらに売買益を追求するのであれば、J-REITを購入するのが良いでしょう。
不動産は一定数の需要によって価格が変動しますから、一時的に価格が下がっても再び値上がりする可能性は高いです。
長期的な視野に立って資産を運用できる人であれば、J-REITは十分に魅力的な投資先だと言えます。