不動産投資といえば、実際にマンションやアパートを購入し、部屋を貸し出して家賃収入を得ることを思い浮かべる人が多いかもしれません。
一方で、最近では多様な不動産投資の形が注目されています。必ずしも直接、物件を購入する必要がなくなりつつあるのです。
そのような不動産投資の手法の一つにREITがあります。
ここでは不動産投資においてREITを選ぶことのメリットや注意点をお伝えします。
REITとは不動産投資信託のこと
REITとは不動産投資信託の略称です。不動産投資信託では、運営元の不動産会社が投資家から資金を集め、資金を元に不動産を購入して運営します。
不動産の運営により得られた家賃収入や運用益、売却益などを投資家に分配するのがREITの仕組みです。
REITは証券化されています。証券市場に上場しているため、自由に売買できる金融商品です。
投資家は一定額の資金を投じてREITを購入します。
REITの相場が変動してREITの価格が上がった場合、売却すれば売却益が得られます。
もちろん、REITを保有していれば、運用期間中は不動産の運用益が投資家に定期的に分配されます。
つまり、REITの大きなメリットは、インカムゲインとキャピタルゲインの両方が得られるところにあるのです。
REITの平均的な利回りは、2019年時点では約3.5%前後です。不動産物件を直接保有する場合に比べて低めの利回りですが、小口から投資ができる点、そして、運用する手間や空室リスクを気にしなくて良い点を考えれば、決して低い利回りとは言えないでしょう。
また、分離課税の対象であるため、税金面でも優遇されています。
最近のREITは積立NISAやiDeCoの投資対象にもなっているため、節税効果が生まれます。
REITの市場規模は17兆円とも言われています。規模の面では不動産投資市場に劣りますが、それでもかなりの規模を誇る投資手法の一つだと言えます。
一般的な投資信託では株や為替、債権の購入や運用で利益を出しますが、REITの場合は株などではなく、不動産を運営します。
投資信託のように不労所得を得ることもできますし、運用手数料などもかからないので、投資信託よりも比較的高い利回りが見込めます。
REITは2019年に12年ぶりの高い相場を記録
REITの歴史は意外と古く、1960年代にアメリカで生まれた投資手法です。日本でも証券化され、50年以上の長い歴史を誇っています。
不労所得に近い収入が得られるうえに、不動産からのインカムゲインと相場の変動によるキャピタルゲインの2つを得ることができるため、早くから日本でも大きな人気を集めていました。
しかし、2008年のリーマンショックでは、大幅に相場が下落しました。2007年の水準から見た場合、2008年のリーマンショック以降は、一時的に平均指数が約1/3に落ち込みました。
REITは不動産相場の影響を大きく受けるため、リーマンショックの影響はどうしても避けられませんでした。
しかし、その後は相場も落ち着き、最近ではREITの人気が再燃しています。なんと、2019年にはリーマンショック前の2007年の水準に平均指数が戻ったのです。2019年10月にREITの平均指数は、12年ぶりに高値を付けました。その後11月に相場はやや下落したものの、12月の頭には2019年10月の水準に回復しています。
REITの人気が再燃している背景として、2つの理由が考えられます。
まずは現在の日本の不動産市場が好調であることです。
日本の不動産価格は観光客の増加やインバウンド需要により、特に都心や観光地を中心に大幅な上昇を見せています。REITの投資対象となる不動産は、そういった都心や観光地のビル、ホテル物件が中心です。観光客の増加の影響を大きく受け、REITの運用物件も好況に沸き、不動産市場と同様に大きく上昇を続けています。REITの相場が上昇すれば、変動益目当てで購入する投資家が増えることから相場は下がりにくいのです。
もう1つは、小口投資ができることです。
REITの保有は数十万円程度から可能です。多額の自己資金を用意して融資を受けなければいけない実物の不動産投資よりも、手軽に不動産収入を得ることができます。
そして、先にも挙げたように、現在の不動産市場は好調です。
都心部やホテルなどの物件は稼働率が高く、利益が順調に出ていますので、配当金も順調です。配当金を目当てにREITを保有する人は、なかなか手放しません。
さらに、REITは一種の投資信託として積立NISAやIdecoといった、国が推進する節税効果を持つ投資手法の1つとして利用されています。
iDeCoや積立NISAを利用して節税と投資する人が増えたことも、REITの相場が高い水準にある背景の1つだと言えるでしょう。
安定して3%から4%の利回りが見込めるインカムゲインの投資手法は、そうは多くありません。株式の配当金の平均水準は2%前後です。
インカムゲインとキャピタルゲインの両方が得られる点で、REITは株式投資と似ています。しかし、不動産の運用益が分配されるため、1社の業績に左右される株式の配当金よりも安定した収入が見込めます。
こういったメリットが有ることから、REITに個人投資家の資金が流入する傾向が続いています。
また日本銀行でも一部のREITを購入するなど、日銀という日本で最大の金融機関が相場の下支えをしているという安心感を持ってREITに投資する投資家もいます。
REITに投資する時の注意点
それでも、REITが必ずしも安定して運用できるとは限りません。いくつかの点に気をつけましょう。
まずREITは市場規模が小さいので、不動産と比べると価格の下落幅が大きいです。
REITの市場規模は17兆円と伝えましたが、日本の不動産市場は200兆円以上と言われています。まだまだ日本の不動産投資市場に比べれば、REITの市場は小さい方です。
現にリーマンショック時の不動産価格は、全国平均で2割前後の下落でした。しかし、同時期にREITの価格は1/3に下落しています。
REITの方が、実際の不動産市場よりも相場が大きく変動することを知っておきましょう。
そして、REITの相場が変動して売却益を得ることができる点は、逆に返せば損失が発生しやすいことを意味します。
不動産投資では、不動産価格の変動に目もくれず、家賃収入だけを目当てにする投資も可能です。
バブル経済時のように不動産価格が暴落しても、家賃はそれほど下がりません。収入への影響は軽微です。特に個人向けの賃貸住宅の家賃の相場は、食料などの物価と連動しています。不動産相場の影響は受けにくいのです。
しかし、REITでは相場をしっかりと監視していなければ、気がついたら「これまでの配当金の利益よりも、相場の下落による含み損の方が上回ってしまう」事態が起こります。
全く関しもせず、毎月配当金が振り込まれるだけの投資手法を探している人には、REITはややリスクが大きいです。
まだ日本の不動産市場も、これから先はどのように相場が動くのかはわかりません。東京オリンピック後は観光客数の下落が予測されていますし、地価のプチバブルが収まれば、相場が下落に転じていく可能性があります。
そういった点にくれぐれも注意しましょう。