現在の日本は、地価が上昇するエリアと下降するエリアが存在し、はっきりと明暗が分かれています。
地価が上昇するエリアの大半は東京23区内、神奈川の一部、大阪・名古屋の都心部など、人口が集中するエリアです。経済や産業が盛んで住宅やビルの需要があることから、こういったエリアの地価が上昇しているのです。
しかし、都心に限らず北海道や沖縄、京都などの観光地の地価が上昇するのも、昨今ではよく見られる現象です。そういった観光地に不動産投資を行う場合、個人投資家はどのような点に注意を払えば良いのでしょうか。
1.地価が急上昇中の観光地とは
地価が上昇中のエリアを具体的に挙げるとしたら、あなたはどの地域を思い浮かべるでしょうか。
2019年の公示地価で最も大きな上昇幅を見せて注目されたのは、北海道の倶知安町です。
この付近はスキー場などのリゾート施設があり、観光需要が非常に高いエリアです。そのため、観光客向けの宿泊施設や飲食店などが多く建ち並ぶようになり、地価が大幅に上昇したのです。
また、都道府県全体で見て注目されたのは沖縄県です。
沖縄県の商業地における平均公示地価は東京都以上の伸びを示しました。
加えて、観光客の増加だけではなく、出生による人口増も顕著でした。
上記の要因が合わさった結果、公示地価の上昇傾向が見られたのです。
その他にも、海外からの観光客が殺到する日本の古都、京都も大幅に地価が上昇しました。
今後はIR施設ができる大阪や横浜で、地価が上昇する可能性は大でしょう。
2.外国人観光客の需要を満たせる物件を探す
地価が上昇基調にあるエリアで不動産投資を行う場合、どのような特徴を持った物件に投資すれば良いのでしょうか。ヒントとして、主なターゲットは観光客、特に外国人の観光客です。まずは外国人の需要を満たす不動産物件の運営を検討しましょう。
2-1.民泊施設の運営
最初に思い浮かぶのは、やはり民泊施設でしょう。
なぜ、民泊施設を選ぶべきなのでしょうか。それは、ホテルや旅館のような大型の宿泊施設よりも事業者としての登録が簡単で、初期投資も必要ないからです。
民泊新法の施行により、民泊施設の営業日数は年間当たり180日以内の制限を受けるようになりました。しかし、制約を受ける代わりに日本各地で施設の運営が可能になりました。そのため、一日当たりの宿泊費を高く設定できる観光地では民泊物件の運営が賑わっています。
一から旅館やホテルを運営するとなれば、大掛かりな建設が必要になります。従業員を多数雇用しなければなりませんが、民泊施設であれば一部屋から運営できますし、管理も外部に委託できます。古い民家などを宿泊施設に転用することで、個人投資家でも気軽に民泊施設の運営が可能になるのです。
また、大掛かりな施設を用意しない代わりに、個人の趣味や嗜好を反映させやすい点、他の宿泊物件との差別化が容易である点も、民泊施設を運営するメリットの1つです。
地方に眠っている古民家を改装して宿泊施設に転用することで、高い利益率を確保できます。
2-2.飲食店の運営
次に考えたいのは飲食店の運営です。観光地では、宿泊施設以外に飲食店が欠かせません。特に観光地の場合、地方ならではの特徴のある名産やメニューなどを提供することで大きな話題を呼ぶことができます。
ただし、飲食店の経営にはキッチン周りなどの大掛かりな設備投資が必要ですし、定期的に働くスタッフをしっかりと確保しなければいけません。個人投資家が一から事業を立ち上げることの難しさを考えれば、元からある飲食店を買収し、オーナーとして運営するスタイルの方が理に適うかもしれません。
飲食店は競争の激しい分野です。オーナー自身が厨房に立って接客するほどの熱意がなければ成功しないとも言われます。
その分利益率は高めですので、大きな成功を目指したい方は飲食店の居抜き物件を購入して運営するのも一つの手でしょう。
2-3.物販テナントの運営
飲食店と比べてやや手軽にできる事業は、物販テナントの運営です。既に運営中のテナントを購入することでスタッフの教育や商品の仕入れルートの確保などの手間を省きつつ、事業に乗り出すことができます。
物販テナントは商品の差別化だけではなく、立地も大いに重要です。京都ではすでに店を建てるための土地がないとも言われており、なかなか新しい土地を購入できません。
テナントの運営は難しいのですが、沖縄や北海道にはまだまだ空いている土地があり、単価も京都に比べて安くなっています。
新規の出店を狙うのであれば京都よりも沖縄、沖縄よりも北海道が狙い目です。
3.出口戦略を立てることの重要性
投資戦略を立てる時、出口戦略もセットで考えておく必要があります。
今人気のリゾート地・観光地で不動産物件に投資するときは、どういった出口戦略を立てれば良いのでしょうか。
3-1.バブル期に建てられたリゾートマンションに学ぶ
まず、念頭に置きたいのは、1980年代後半のバブル期に建てられたリゾートマンションのことです。当時は都心に近いスキー場ということで、長野や群馬、山梨などに数々のリゾートマンションが建てられました。
スキーだけではなく、温泉が楽しめるマンションも多く建てられたのです。
しかし、バブル期に建てられたリゾートマンションは現在、観光地の衰退によって値がほぼつかなくなり、10万円程度で売り出されているケースも有るほどです。
管理費や修繕費、組合費などの出費がのしかかり、手放したくても誰も買わない状況が続いているのです。
不動産投資の失敗例をよく知ることは、同じような失敗を避けるために役立ちます。
こういったリゾートマンションの衰退と同じ轍を踏まないように、入念に事前調査と出口戦略を立てておく必要があります。
3-2.外国人観光客は政治情勢の影響を受ける
バブル期のリゾートマンションは、日本人の観光需要に対応したものでした。しかし、昨今の日本の観光地に向けられる需要は、外国人観光客に依存したものになっています。
それだけに、日本人観光客よりもさらにリスクの高いターゲットである以上、より変動が激しくなっています。
外国人観光客は政治情勢の影響を受けて増減します。例えば、2019年に日本と韓国の関係が悪化し、福岡県で韓国人の観光客が大幅に減少しました。日本と近隣諸国との関係が悪化すれば、当事国からの観光客が大きく減少する可能性があります。少なくとも、中国との関係性は常にチェックする必要があります。
また、日本と直接の利害関係がなくても、海外で紛争や戦争が発生すれば、巻き込まれた国の国民はおいそれと海外に出国できなくなり、観光どころではなくなります。
そういった意味では外国人観光客だけに依存することはリスクが高いです
日本人観光客もしっかりと取り込める体制にしておくべきです。
3-3.交通の便の改善に注意を向ける
地価を大きく左右するポイントの1つが、交通の便です。
電車の利便性が飛躍的に向上したことで武蔵小杉の地価が大きくアップしたように、観光地も都心からのアクセスがスムーズであるか否かで、観光客数や地価が大きく変化します。
そういった意味では、アクセス数が大幅に改善した北陸新幹線沿いの観光地は、今後も安定した集客が見込めるでしょう。
地価の低い北海道で新しく不動産を購入する時も、主要な駅や空港からの柔軟なアクセスを可能にする改善計画の有無を調べ上げてから投資した方が無難です。
もちろん、短期間だけ利益が出れば良いと考える方は、居抜き物件を購入して数年間運営し、値が下がる前に売ってしまっても問題ありません。
方針がぶれないように運営することは、不動産投資において失敗を防ぐための最大のポイントです。