大手不動産デベロッパーのレオパレス21が建設したアパートが、建築基準法に違反する内容であったことが大きな問題になっています。このレオパレス21のアパート不良工事問題は、不動産業界にどのような影響を与えるのでしょうか。
1.レオパレス21の施工不良問題とは?
レオパレス21の施工不良問題とはどういったものなのか、まずは確認してみます。
1-1.界壁がないなど、建築基準法を満たしていない
2018年5月、テレビ東京系の番組で、レオパレス21が建築したアパートに界壁がなく、建築基準法に適合した建物でないことが報道されました。レオパレス側はそれを一旦否定したものの、2019年には国土交通省から、同社の物件が不良物件ばかりであったことが公表されました。
取り上げられた問題は、以下の内容でした。
- 天井裏の部分に延焼などを防ぐための界壁が設置されていなかった
- 壁に必要な断熱材が用いられておらず、断熱効果が薄い素材しか使われていなかった
- 天井の施工に関し、厚みなどの問題で建築基準法に適合する工事が行われていなかった
国土交通省からの指示を受けたレオパレスは、問題の全容を明らかにするとともに、第三者委員会を設置して再検査を開始しました。結果として、入居者やアパートのオーナーに対する保証を発表しています。
1-2.レオパレスの所有する建物の8割が問題物件
現在、レオパレスは日本全国で4万棟弱のアパートを建てていると言われています。2019年2月時点で調査を進めている物件は、約1万4千棟。その8割にも及ぶ1万1千棟が、建築基準法に適合しないなどの問題を含んでいるとされています。
予想を遥かに超えるほどの施工不良問題であったことは、言うまでもありません。レオパレスとしては国土交通省の指示通りにこれらの建物全てを確認し、建築基準法に適合できるような再工事を行わなければいけません。
2.会社の経営にも大きな影響を及ぼす
アパート施工不良問題は、レオパレスの経営にも大きな影響を及ぼしています。最初に発表があった2018年4月から6月の時点では10億円の赤字となっていましたが、会社の売上や利益からすれば、まだ、それほど大きな損失ではありませんでした。
しかし、今回は大幅な改修のため、レオパレスは360億円の費用をかけた追加の工事を予定しています。その結果、2019年3月期のレオパレスの決算は、436億円もの赤字になるとの見通しが立っています。国土交通省から改善命令が下った後、株価も大幅な下落を見せています。
3.レオパレスの対応は?
この事態に対し、レオパレス21はどのような対策を行うのでしょうか。
3-1.不良物件は補修工事を行うと発表
レオパレスは、今後、全物件のチェックを行い、問題があった建物は補修工事を行うとしています。また、レオパレスの物件から転居を望む入居者、また、転居が必要なほど不良な状態にある建物の入居者には、転居の費用を負担するとしています。その費用は先に挙げたように、合計で360億円になるとされています。
3-2.会社の経営は成り立つのか?
これほどの大がかりな支出を余儀なくされたレオパレス。今後がどうなるのか、広く注目されています。株価はひどく低迷し、上向く兆候はまだ見えていません。株価の低迷が即座に倒産につながるわけではありませんが、資金調達面において非常に不利であることは否めないでしょう。
そして、売り上げに関しても、見通しが立ちません。レオパレスでアパートを建てるオーナーの減少は、想像に難くないでしょう。
元々、レオパレスのデベロッパーは、サブリース契約をセットにして投資家を勧誘していました。サブリース契約の問題についても、昨今、非常に大きく取り上げられ、個人投資家が不利益を被る事態が目立っています。
レオパレスの物件自体の人気も低迷し、タレントがCM 契約を打ち切るなど、レオパレスというブランドそのものの存亡に関わるほどの状態なのです。
2018年の決算を見ると、レオパレスの利益は229億円でした。会社にはまだ余剰資金があると見られています。しかし、この状態が続けば、2年から3年後には資金枯渇の怖れがあります。
レオパレスが信頼を回復するまでの道のりは、かなり険しいと言わざるを得ません。
4.レオパレス物件が市場に出回りはじめている
そのような中、レオパレスのオーナーが、所有する物件を売却に出す様子が報道されました。
4-1.割安物件はあるものの、そのままでは貸し出すことができない
オーナーの本音は、「レオパレスの物件をこれ以上所有していても、これ以上の入居者は見込めない。むしろ、被害が深刻になる前に、早めの売却を狙おう」なのです。
しかし、レオパレスの物件は、建築基準法上の瑕疵物件に該当します。そのため、補修工事が行われるまでは、物件を購入しても貸し出すことができません。そのような状況下で買いたい、借りたい人はなかなかいないでしょう。
レオパレスが責任を持って補修工事を行うとしても、あまりにも物件の数が多すぎるため、工事がいつ完了するのかが分かりません。物件がよほど割安な価格で売りに出されない限り、購入者は現れないでしょう。
しかも、いかに割安な物件であっても、補修の工事費用を含めた上で一般的な相場よりも安い価格にしない限り、なかなか売れるものではないと考えられます。
4-2土地目当てに購入するのであれば、検討の余地がある
つまり、レオパレスは今、建物が売却の足かせになっている状態です。もし、アパート投資を検討している方がこの記事を読み、レオパレス物件を購入するのであれば、一旦更地にして別の利用法を考えることが賢明です。
レオパレスのアパートが建っている土地を購入し、更地にして売却したときに路線価を上回るのであれば、相応の売却益が見込めます。少なくとも、建物代はゼロとみなします。全体的に物件の購入価格が相場よりも安くなければ、買わない方が良いとも言えます。
4-3.賃貸物件からトランクルームなどへの転用も
一方で、建物をそのまま活かしたい場合、居住用物件ではなく、他の活用法を考えてみましょう。用途として一番に考えられるのは、荷物を預かって保管する倉庫やトランクルームとしての活用です。ただ、倉庫は耐荷重量などの基準が厳しいため、補修工事や補強工事を行う必要があります。
トランクルームの場合、大きな荷物が預けられることはめったにありませんので、空調管理や防犯面がしっかりしていれば、問題なく運営できます。そのため、最も適切な活用法は、トランクルームだと考えられます。物件の立地にもよりますが、アパートであれば徒歩30分など、駅から離れた場所にあることは考えにくく、利便性に問題がないものが多いでしょう。
もちろん、トランクルームにするための設備投資も必要ですが、トランクルームは一般的にアパートなどの居住用物件よりも収益率が高く、短期での資金の回収も不可能ではありません。周辺の状況から、トランクルームの需要があるような場所であれば、レオパレスの物件を購入してそのような設備に転用しましょう。
まとめ
レオパレスのアパートで取り上げられた建築基準法違反問題は、建物の問題だけではなく、アパートデベロッパー会社全体の問題に発展する可能性があります。レオパレス以外の業者でも同様の問題が生じる可能性があるため、投資用物件の購入を検討する人は業界全体の動きに注目しましょう。そして、場合によっては、格安で土地や建物を購入できるチャンスにつながります。そのような物件が出回っていないか、不動産業者に尋ねてみてはいかがでしょうか。