Amazonがアメリカで不動産に進出 その狙いは

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アメリカ生まれの大手通販会社Amazon。最近は通販事業にとどまらず、様々な配送サービスや映像配信サービス、インターネットのクラウドサービスなど、多様なインフラ事業への進出を図っています。

そのAmazonが豊富な資金力を背景に、ついにアメリカで大手不動産会社と提携のうえ、不動産の仲介サービスを始めました。

いわゆるGAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)の一角として世界4大企業の1つに数えられるAmazon。

Amazonが不動産業界においてどのようなビジネスを展開していくのか、ここではご説明します。

1.Amazonが展開する不動産のビジネスモデル

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まずはAmazonが展開する不動産関連事業のビジネスモデルについてご説明します。

1-1.大手不動産会社リアロジー・ホールディングスと提携

2019年4月にAmazonが発表した不動産事業への進出のきっかけは、アメリカの大手不動産会社リアロジー・ホールディングスとの業務提携にありました。

提携した事業名には「TurnKey(以下:ターンキー)」という名称がつけられ、ターンキーを中心にAmazonは不動産仲介事業に参入しました。

リロジー・ホールディングスは以下のような不動産関連ブランドを展開し、アメリカでも最大手の不動産会社に数えられる企業です。

  • センチュリー21
  • コールドウエルバンカー
  • ベターホームズアンドガーデンズリアルエステート
  • サザビーズインターナショナルリアルティ

など

非常に大きなグループを形成していることが分かります。

1-2.Amazonが展開する仲介エージェントの紹介サービス

ターンキーで行われる仲介サービスについてですが、不動産の購入希望者とエージェントをマッチングさせることを主な目的にしています。

まずはAmazonが展開する大規模なEコマースサイト上で、不動産の購入希望者を募集します。

そして、不動産の購入希望者はターンキーに条件を入力すれば、提携先のリアロジー・ホールディングスに登録する不動産の仲介エージェントが、条件に合致した最適な物件を紹介します。

Amazonは、自社が抱える顧客の情報や大規模なEコマースサイトの技術を活かし、不動産の仲介サイトを展開しているのです。

現在はマーケットプレイスというサービスを通販サイトで展開しています。

マーケットプレイスにおいては、先述の出品者が不動産仲介エージェントに、通販サイトの利用者が不動産の購入希望者に該当するでしょう。

その意味では不動産ビジネスをより簡略化し、身近なものにする効果が見込めます。

ターンキー経由で不動産の売買が成立した場合に、Amazonは仲介手数料を受け取る仕組みとなっているのです。

2.Amazonが不動産の仲介市場に参入する理由

アメリカにおいて数多くの不動産会社が事業を展開する中、なぜAmazonは不動産の仲介市場に参入したのでしょうか。

新規参入するメリットはいったいどこにあるのでしょうか。

2-1.通販サイト以外の大きな収益源の獲得

年間のAmazonの売上は2,000億ドルを超えると言われています。しかし、アメリカの不動産仲介市場の規模は年間100兆円を超えていて、日本以上に膨大なマーケットです。

Amazonは100兆円を超えるマーケットにおいて自分たちの存在感をアピールし、未知の分野に進出することで売上の増加を見込んでいます。

広大な国土を保有するアメリカの不動産市場の規模は、日本とは比べものにならないほど巨大です。ネットビジネスの巨人と呼ばれるAmazonにとって、十分に進出する価値がある市場だと言えます。

それでも仲介手数料のみでは、売上はそこまで上がらないかもしれません。

ただ、ネット集客のノウハウを活かしたビジネスが展開できるわけですから、設備投資やサイトへの投資は低コストで済みます。

したがって、コストパフォーマンスの良いビジネスが展開できるのです。

2-2.IoT、スマートホームの導入による売上確保

また、もうひとつ見逃せないポイントとして、ターンキー経由で不動産の購入に至った場合、入居者はAmazonから購入価格に応じた特典がもらえます。

特典にはAmazonが展開しているAlexaなどのスマートスピーカー、家全体へのIoT技術の導入などのサービスなどが予定されています。

IoTやスマートホーム関連の家電を販売することで、Amazonはさらに売上を伸ばすきっかけを得ます。

さらに、すぐには売上に結びつかないのですが、今までAmazonを利用しなかった個人に接点が持てるようになります。

まずはAmazonのサービスを知らなかった人が、住宅の購入をきっかけにAmazonを利用するようになり、商品を購入する流れを作ります。

Amazonのサービスには電子書籍のKindle、動画配信のAmazonプライムなどがありますが、Amazonの家電を利用してもらうことでAmazonの利用者が増える可能性があるのです。

不動産の仲介手数料にとどまらず、Amazon自体の売上も更に伸びることでしょう。

3.Amazonで不動産を購入するメリット

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個人がAmazonで不動産を購入する直接的なメリットについてもご紹介します。

3-1.不動産価格に応じた特典が付く

ターンキーで不動産を購入すると、購入者は価格に応じて数々の特典が受取れます。

特典の一覧は以下のとおりです。

不動産価格15万ドル(約1,600万円)〜39万9,000ドル(約4,250万円)の物件を購入

→1,000ドル(約10万6,000円)相当の特典

不動産価格40万ドル(約4,260万円)〜69万9,000ドル(約7,440万円)の物件を購入

→2,500ドル(約26万6,000円)相当の特典

不動産価格70万ドル(約7,450万円)以上の物件を購入→5,000ドル(約53万2,000円)相当の特典

※1ドル=107~110円の為替レートを想定

さらに特典として、以下のようなサービスも付随します。

  • AmazonHomeService

・購入した家具の組立、住宅のハウスクリーニング、ハンディマンサービス、荷解き、清掃など

  • AmazonSmartHomeProduct

・AmazonEchoDot、AmazonEchoShow、FireTV、RingDoorBell、SmartThingsHubなどをもらえる

  • AmazonMove

・Amazonの住替え関連商品が10%OFFになる

ターンキー経由で自宅や投資用の不動産を購入すると、購入者には多くのAmazonのサービスや製品の特典が付与されます。

4.Amazonの不動産事業の展開予定

Amazonはワシントンなどを中心としたアメリカの主要15都市で最初にターンキーを展開し、ビジネスの拡大を図りながらアメリカ全土への展開を予定しています。もしアメリカで成功すれば通販サイトと同様に、アメリカ以外の国で同サービスを展開していくことは想像に難くありません。

いずれ日本でも多くの不動産会社と提携してこのような仲介サービスを行い、購入希望者にはAmazonならではの特典を付与することになるかもしれません。

日本独自のIT関連のサービスが生まれにくい現状、アメリカ生まれの巨人アマゾンは今後どのような手を売ってくるのか、注目したいところです。

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